水中音響における可視化技術部会報告書

概要

近年、性能が大幅に向上した水中音響機器・センサや信号処理・画像処理ソフトの多機能化等により、水中音響画像化技術は遠隔操作無人探査機(ROV)や自律型無人潜水機(AUV)などにみられるように、種々の分野で多くの成果をあげてきている。また、高性能なコンピュータの利用が容易になったことにより、複雑な海洋環境下での音波の伝搬や散乱が短時間で計算でき、水中音場の空間的・時間的変化の可視化が益々充実されると共に、これと表裏の関係にある海洋音響トモグラフィの分野においても、各種海洋環境の同定精度が向上し、視覚的にも海洋環境の変化の把握が容易になりつつある。さらには、医療音響の分野においては、生体組織あるいは超音波造影剤からのエコーの非線形成分を用いたハーモニックイメージング、心臓の壁の動きを可視化する組織ドプライメージング、生体組織の硬さを可視化するエラストイメージングなどの新技術が日常の診断に使われている。また、海洋土木の分野においては、I-construction * により港湾のデータ一元化やそれを用いた水中施工や維持管理の遠隔操作による省力化への大きな動きがある。特に、水中部の情報取得には、音響技術の更なる展開、水中での視認技術を初めとする音響機器の現場導入には非常に高い期待がある。
このような水中音響による画像化技術のみならず、音場や関連するフィールドの可視化技術について、各分野での動向を踏まえた関連技術のレビューに加え、異分野間での情報交換や技術導入・応用を検討するため「水中音響における可視化技術部会」を開催し、検討会を重ねた。限られた期間であったが、関係者間で有意義な情報を共有できたと考える。今後、可視化技術はさらに発展していく分野であり、海洋音響に係る様々な分野に応用され、産業界において役立っていくものと期待する。

* I-construction : 国土交通省は、建設現場の生産性向上を目指し、建設工事における測量、設計・施工計画、施工、検査の一連の工程において3次元データを活用する「I-construction」の取り組みを進めている。

目次

  1. 水中音響ビデオカメラの開発
  2. 海洋音響における周囲雑音イメージング
  3. 合成開口ソナーの近年の動向
  4. 医療用3D超音波画像と3Dソナー画像の比較
  5. 海洋における音波伝搬の可視化
  6. 水中画像化ソーナー用音響レンズについて
  7. 医用超音波・UWBレーダー領域におけるアダプティブビームフォーミング技術と開口合成技術を用いた用いたイメージング
  8. 音響ビデオカメラを用いた水中生物・植物情報の可視化
  9. 超音波探傷における音響可視化について
  10. マルチビーム測深機と音響ビデオカメラを用いた港湾岸壁形状情報の可視化
  11. 海洋音響トモグラフィ
  12. 港湾監視ネットワークシステムにおける音響信号に可視化
  13. 各種音響レンズの特性
  14. W I (Waveguide Invariant)の概念とその応用
  15. 海底音響トモグラフィーとその応用

付録:なお、本部会報告書には、報告内容を収納したCD-ROMが添付されている。